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白くま文庫

本の話、日々の出来事など。

尾崎翠生誕120年記念 「尾崎翠と、追憶の美し国へ」1日目

尾崎翠生誕120周年記念「尾崎翠と、追憶の美し国へ」に参加してきました。

大変充実したイベントだったので、備忘録も兼ねてレポートしたいと思います。

 

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岩見町の海

10月1日 曇り AM11:45 鳥取

午前中に砂丘を見て、すなば珈琲でココアを飲み、前泊したホテルから荷物を貰って鳥取駅に集合。もうすでに数名参加者と思われる方が集まっていました。バスに案内され、お弁当が配られました。お弁当、海の幸がいっぱい。

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PM 1:00 岩美町中央公民館 第一部

町長のご挨拶ののち、

村田喜代子先生の講演『筋骨と花束』

吉行和子さんと浜野佐知監督のトーク

・映画『第七官界彷徨尾崎翠を探して―』上映

 

講演『筋骨と花束』

村田先生の「鍋の中」、どことなく「第七官界彷徨」に似ているところがあり(親戚の子どもたちが親元を離れて暮らす、オルガンを弾く、などなど)、ご飯を作るシーンやタイトル通り鍋の中の世界が大変魅力的なのですが、村田先生も作品を書かれていた当時、尾崎翠に似せまいとしてもどうしても似てしまった、とおっしゃっていました。「ルームメイト」は未読ですが、こちらも「第七官界彷徨」の影響を受けているとのこと、読んでみたいと思います。

 

講演で最も印象に残ったのは、「尾崎翠の小説を読んだときに、花束をもらったような気がした。けれども作品を読んでいるうちに、その花束をくれたその手は、なにか、ただ者ではないものの手だと思った」というようなお言葉(原文ママではありません。書き手の解釈あり)。

これが講演タイトルの『筋骨と花束』につながっていて、官能的なものを作中から排除して、お兄さんに片恋をする、現実の自分がなれない女の子を描いた、イケテル!とみんなが思う「花束」のようなところ(トキメキ要素みたいなもの?)と、戦争の近づく中で、リアリズムを排除しているのにリアリティのある小説を文体でつくる腕力、とくに鳥取に戻ってからの、自分の親戚の子どもたちを育て上げた生活者(後世は現実をやった、とも)としての「筋力」の二つが尾崎翠の魅力、とのことでした。

(このへん、書き手の解釈が大いにあります…)

 

私は尾崎翠の作品は割りと何でも好きですが、改めて「第七官界彷徨」や「歩行」は、現実の理屈から離れた、けれどもリアリティのある作品世界を作っているところが大きな魅力なのだな、と改めて思いました。

「無風帯から」は、光子が泣いたり感情を表に出したりするのを我慢する描写が好きです。

 

吉行さん・浜野監督トーク

吉行さん、浜野監督のトークでは、撮影秘話など聴くことができて、続く映画上映への期待が高まりました。

作中では、尾崎翠が亡くなるところからスタートして、東京で作品を書いていたところまで点々に時間を巻き戻しになっていきますが、最後に鳥取砂丘尾崎翠や松下文子、林芙美子などがはしゃいで歩くシーンは、現代の鳥取尾崎翠を合わせたかった、とのお話が印象に残っています。トークを聴いていて、吉行さん、浜野監督のお二人には強い信頼関係があるのだな、と思いました。

 

映画上映『第七官界彷徨尾崎翠を探して―』

 実は初めての鑑賞。ずっと観たかったのです。

映画は、尾崎翠が亡くなるところから始まり、養老院での日々、おばとして子どもの洋服をつくる日々、戦争中、東京から鳥取に帰るとき…と、時間が点々にどんどん巻き戻っていきます。その時点時点のシーンと交互に「第七官界彷徨」のシーンが入っていく、という構成です。

もともと私は、小説を読むときに、作者をわきに置いて、作品そのものだけを読むようにすることが多いのですが、この映画で尾崎翠はどういう人間であったのか、考えさせられました。作中では、精神のバランスを崩している描写もありましたが、全体として快活で、鳥取に戻った後は特に、日々の生活をたくましく過ごす生活者としての尾崎翠が描かれていました。

事前にyoutubeで観た予告編で、「文学なんて、色々ある人間のひとつ」と言うシーンがあって、どういう文脈で言うのだろう……と、尾崎翠=作家のイメージが強い私としては、正直どきどきしていたのですが、映画で描かれる尾崎翠像にぴったりで、自然な言葉でした。

実際尾崎翠がどんな人だったのかは分からないのだけれども、どこかで「割りとさばさばしていた」というようなことを読んで、また手紙など見るに、私の中では「こほろぎ嬢」の一説、「柳腰の女が却って脂肪に富んだ詩を書いたり、腰の太い女が煙のような詩を書く」というのではないけれども、作品の味わいと本人の気風は違って、文学への強い思いを持ちながら、映画のようにさっぱりした力強い人であったのかな、というイメージになりました。日常会話でちょっと文学的な語彙を使ってきそうなイメージもある笑。

翠役の白石加代子さんが、写真の翠に似ていて、また演技も生命力を感じられて、素敵でした。ぴったり。

 

第七官界彷徨」のシーンは、自分の中のぼんやりあったイメージがくっきりするような、作品にぴったりの映像でした。三五郎や二助の部屋の美術?がとても良かった。作品を読むだけでは台詞もなく、どんな人物かよく分からない町子が、大人しいけどちょっとさばさばした感じの子として描かれていました。

映画、何度も観たいと思って、上映後DVDを購入しました。

 

PM6:00 岩美町立渚交流会館

KEiKO*萬桂さんのパフォーマンスと交流会がありました。

パフォーマンスでは、照明も落とされ幻想的な雰囲気の中、舞書が行われました。

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↑完成した作品

 

交流会では、岩美町の海の幸や梨、とうふちくわ、旅人の宿 NOTEさんより、尾崎翠の「アップルパイの午後」、「第七官界彷徨」の味噌汁を焦がすことから、アップルパイと焦がし味噌のスープをいただきました。どの食事も大変美味しかったです。リレートークを聴き、また参加者の皆様や地元の方々とお話が出来ました。講演をされた村田先生とお話しすることもできました!「鍋の中」のことお話したとき、嬉しくて緊張してしまいました……。

最後はとうふちくわでできた、とうふるーと(とうふ+ふるーと=笛)の演奏とともに、「ふるさと」を歌いました。とうふるーと結構しっかり音が出ていて、驚きました。

 

PM 8:30~

 交流会のあとは、バスで移動してゆかむり温泉に入り、その後かまや旅館で懇親会がありました。

参加者の皆さんは、浜野監督のファンや尾崎翠ファンが多いようでしたが、学生さんや作家さん、映画監督さん、詩人さんなどなど様々な方々が集まっていました。自己紹介ののち、歓談♪ みなさんとお話ができて、とてもとても楽しかったです。浜野監督は大変明るい方で気さくな印象の方でした。

かまや旅館さんのお夜食(といってもまるっと一食分くらいある!)とっても美味しかったです。ここでも海の幸を堪能しました。そんなこんなでふかふかのお布団でツアー1日目を終えました。2日目に続く。