2018年をふりかえる(後篇)

実家に帰ってきた。ずっと雪が降っている。実家の自分の部屋の掃除をしている。

 

7月

佐原水郷に行ったり、泉鏡花の舞台を見に行ったり、日記を振り返るとかなりエンジョイしていたようだ。訪問したお家から図らずも隅田川の花火が見えたのも7月。

寄居読書会に参加し、久々に夏目漱石『こころ』を読み直した。そういえば、先週くらいに職場の飲み会で、近い年の人が、「私は夏目漱石は『こころ』が傑作で他はそれを超えないと思うんですけど・・・・・・」と話してくれた。

 

coyoteの西瓜糖の日々特集が気になり、『西瓜糖の日々』を読んだ。文章の織りなす圧倒的な美しさや切なさ、透き通るような冷たさ、灯りなどなどに夢中になった。マーガレットだけなんだかかわいそうで、なにか分からない人をハブにする空気を感じないでもなくて、そこが引っかかったのだけど、そこがあったとしても圧倒されるものがあるよね、と人に言われたけれども、どうなのだろう。そうなのかもしれないけれども。

そのあと読んだcoyoteの西瓜糖の日々特集も良かった。

 

梨木香歩『海うそ』が出ていたので読んだ。失われていくものへのまなざしがとてもよいと思った。おじいさんとおばあさんが月夜に海に漕ぎ出でていくのがとても印象的。

小川洋子『密やかな結晶』を読んだ。小川洋子作品はそれなりに読んできて、好きな作品もたくさんある。その中でも、この作品はかなり好きになった。

7月の読書を見返すと、このほかにも山崎まどか『優雅な読書が最高の復習である』を読み、海外モノに興味がわくなど、かなり充実していた! 『Anthropology: 101 True Love Stories』を買ってみたりしちゃった。

 

8月

仕事は忙しかったが、夏期休暇で友人らと尾道しまなみ街道旅行をした。しまなみ街道サイクリングは綺麗な海の近くをたくさん走れて、それはそれは楽しいものだった。友人はわたしより激務だからか、昼間から酒を飲むぞ! と言っていたので、一緒にたくさんお酒を飲んだ。8年ぶり? くらいに海水浴もできたし、手持ち花火もした。自転車と尾道の坂で足がぱんぱんになった。尾道にある林芙美子の住んでいた家がとても小さくて驚いた。帰りに一人で寄った倉敷も大正時代から続いている銭湯に入ったり、蟲文庫さんに行ったり楽しんだ。

 

8月は乃南アサ『水曜日の凱歌』が面白かった。まさに、少女大河物語! どんどん読み進めてしまった。

 

9月

入社してから一番仕事が忙しかった・・・・・・ 記念日の食事のデザートで、シュワシュワするムースを食べて新感覚で美味しかった。小沼丹『お下げ髪の詩人』がなかなかよかった記憶。月末には一山越えたので、仙台の祖母宅に行った。温泉のバイキングでは祖母がわたしよりたくさん蟹を食べていた。蟹酢おいしい。

仙台は、仙台駅の北辰というお寿司屋さんがとても美味しいです。(いつも並んでいます)

 

10月

一山越えたのになぜか忙しく、ちょっと気持ちが参った月だった。

友達の結婚式で静岡に行った。帰りに寄った熱海で入った田園という喫茶店には店内に鯉が泳ぐ池があり、鯉を眺めながらプリン、カフェオレを楽しめた。

豊穣の海チャレンジを始めて、「春の雪」は難なく読めたが、毎度のごとく「奔馬」で止まってしまっている12月末日。

友人のすすめやツイッターで話題に出ていた本をよく読んだ。

くどうれいん『わたしを空腹にしないほうがいい』は5月に一緒に盛岡に行った友人にすすめられて読んだ。ご飯がおいしそうだったし、料理もおもしろそうに書いてあった。サービスエリアのソフトクリームの話が印象に残っているし、

アントニオ・タブッキ『島とクジラと女をめぐる断片』もよかった。自分がクジラだったら、手が短くて相手と抱き合えないけれども、クジラだったら人間って手が長くて面白いなと思うのかなと思った(そういう本ではないと思うけれども)。長いこと海なし県民なので、海や港町の話などはなんとなく惹かれてしまう。詩的な作品だった。

矢川澄子『兎とよばれた女』もやっと読み終わる。かぐや姫のノートのところ、雨宮まみさんの映画『かぐや姫』評を思い出した。

もうこの女の人は止められないんだな、止めてはいけないんだな、という浮き世離れした遠さが印象に残った。構造がちょっと・・・・・・? これでいいのか? とも思った。けれどもそういうことをいう小説ではないのだろうな、とも思った。私は〜ともと思ってばっかりだと思った。

10月はpippoさんのポエトリーカフェに参加した。会場の山小屋風の喫茶店がおしゃれだった。たぬきケーキもかわいい。モモンガさんに北村薫『空飛ぶ馬』を貸していただく。

あと、ミュージカルマリーアントワネットがとてもよかった。田代万里生さんのフェルセン伯爵が誠実さ、優秀さ、優しさ、爽やかさ等々を持ち合わせていてかなり素敵だった。

近松秋江『黒髪 他二篇』は、「黒髪」だけで終わった方が女心と自分の思いが朝靄のなかでぼんやり掴みがたいものになっている感じで好きだな・・・・・・ と思ってしまった。

中本速さんの詩集を読む会に参加した。あまりいい感想を言えず申し訳なく悔しい思いもあったが、みんなでひとつの作品を読んで話し合うのはとてもとても楽しかった。

あと、たぶんこの時期にチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『アメリカにいる、きみ』の表題作を読み、感涙してしまった。私は、頑張ればどうにかなる、なんてことは必ずではないことは分かっているのだけれども、なにかとうまくいかないときは頑張りが足りなかったからかな、と思ってしまう節があるのだけれども、この作品では人間関係における、そのどうしようもなさがするりと書かれていて、そのするりに胸を打たれてしまった。

あと、アマゾンビデオで観たグッド・ガールズ!というドラマが面白かった。

 

11月

一難去ってまた一難。ぶっちゃけタフではないので、ひーひー言っていた。来年はタフになりたいし、今年よりはタフになれるだろうと思う。

こががっこさん主催で山梨県立文学館で行われていた草野心平展に行った。みんなで芝生に座り朗読をしたり楽しい時間だった。

多和田葉子『穴あきエフの初恋祭り』を読んだ。表題作の、時間の進み方が自分のとらえ方によっていかようにでもなる・なってしまう感じが面白かった。祭りの風景や細部の描写、ふとした一行一行がうつくしい一篇だった。

古谷田奈月『リリース』はかなりの衝撃作で、しっかり感想を書けるくらい考えなきゃと思っている間に年末になってしまった。仕事でもそれ以外でも、ジェンダーのことなど日々考える機会が多いのだけれども、どういう風に考えたら公正なのかな、公正・平等ってなんだ? と自分の考え方の根幹を揺らがせられた作品だった。暗いところで相手の目に光が映って、そこが目だと分かる、というようなことが書いてあり、そこが個人的にとても好きだ。

 

12月

仕事がやっと穏やかになった。10月に借りた『空飛ぶ馬』がとても面白くて、続編もどんどん買う。横浜の駒井哲朗展を観た。絵を見ていると時間が止まったりゆっくり流れたりするような吸引力があった。付き合っている人とその後合流して、横浜をぶらりした。クリスマスシーズンの横浜はおしゃれで素敵でシティを感じた・・・・・・

また、伊東に旅行して、ハトヤホテルに泊まった。温泉卓球にうち興じた。クレーンゲームですみっこぐらしを取ることができた! そのあと風邪を引いてしまい、しばらく普通のティッシュで対応したので、鼻の下が真っ赤になった。

多和田葉子『地球にちりばめられて』がとてもとても面白かった。パンスカのときの言葉の感じがなんとも言えず好きだ。「横に並ぶ人」という言葉が印象に残っている。

 

弟の真似をして始めた1年の振り返りだけれども、結構時間がかかってしまった。

覚えている・いたいこと、面白かった本など振り返るのは楽しかった。

 

今年のベスト作品を選ぶなら・・・・・・

多和田葉子『容疑者の夜行列車』

古谷田奈月『リリース』

近松秋江「黒髪」

梨木香歩『海うそ』

小川洋子『密やかな結晶』

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ「アメリカにいる、きみ」

小沼丹『小さな手袋』

サリンジャーフラニーとズーイ

リチャード・ブローティガン『西瓜糖の日々』

アントニオ・タブッキ『島とクジラと女をめぐる断片』

堀江敏幸『その姿の消し方』

 

今年は久々の仕事復帰で、初めてのことも多くあたふたすることが多かったけれども、来年はきっともっとうまくやれるはず! と思っています。たぶん。

思えばいろいろ反省点はありますが、今年はなかなかよい年だったかも。

来年も元気に過ごしたい。