夏の旅行 その1
年末の修論でつらいときに夏の楽しい旅を思い返して耐えていたので、その旅行のことを書く(長くなっちゃったので、分けて書く)。
夏は大学時代の友達と、東北ドライブ旅行をした。
もともと、青森県三沢市で行われる寺山修司の市中劇を観に行くのが目的だったのだが、秋田県在住の友達が車を出してくれるというので、寄り道していくことになった。
本当は3人で行きたかったが、うち1人は仕事のため来られず、二人旅となった。
8月5日
彩の国S県在住の私は、朝早い新幹線で東北に向かった。
良く覚えていないが、東北夏祭りが重なる時期で朝の便では指定席が取れず、たちのりで仙台まで行き乗り換えをしたが、それでも座れなかった。
仙台は大学時代を過ごした街なので、見慣れた景色にひとりわくわくする。
秋田県の田沢湖駅に向かう。途中、新幹線は在来線の線路を通る。初めてではないけれども、やっぱり驚く。
田沢湖駅に着くと、大学生の頃よりややふっくらした友達が軽自動車で待っていた。
車に乗ると、早々六角形の瓶のはちみつをお土産にくれた。このあたりではちょっと有名らしい。関東に遊びに来てもいつも秋田土産をくれるまめな友達である。
田沢湖駅を出発した軽自動車は、坂道を苦しそうに走る。お姉さんのお下がりというオッティは、坂道のときにはエンジンを切ってアクセルを踏まないといけない。夏の日差しに山の緑が鮮やかだった。
私が、
「最近かっこいいお兄さんと、田んぼはいいよねという話をして、お兄さんは夏に稲が緑にさわさわなっているときが好きと言っていて、私もいいと思うけれども、本当は春の田植えの前の田んぼに水を張って空が映っているときが、短いけれども一番好きだわ」
と言うと、友達は
「俺も実はそのときの田んぼが一番好きだわ」
と言って盛り上がった。友達は大学卒業後は仕事の傍ら毎年実家で田植えをしている。
当初の予定では、まっすぐ尾花沢鉱山に行くはずだったが、時間がありそうなので、日本3大がっかりスポットとして名高い田沢湖も観て行く。
この像の手前はすでに浅瀬で、魚がたくさんいるのが見えた。田沢湖は遊覧船も出ていて楽しそうだった。
今回は長いドライブの旅になることがわかっていたので、お互い好きな曲を入れたCDを持ってきて旅の記念に交換することになった。
なんと、友達のくれたCDはジャケットが手書きだった・・・・・・!
三沢は三沢市、ては寺山修司、10-02 43は、田園に死す、らしい! 絵がうまい!
選曲は、SHISHAMOの「僕に彼女ができたんだ」のしばらくあとに奇妙礼次郎の「君が誰かの彼女になりくさっても」が入っている少し病んだCDだった(狙ったらしい)。
ちなみに私は、SHISHAMOのこの歌は好きだが、他の恋愛うまくいかないソングは、かなり身につまされて正気で聞いていられない。友達のCDでは、きのこ帝国の「パラノイドパレード」がよかった。
途中休憩をしながら尾去沢鉱山跡に向かう。助手席でソフトクリームを食べるという長年の夢が叶う。ソフトクリームは溶けるし外は暑いので早く食べ終わってしまい、夢だった時間があっという間に終わり、あらまあと思う。わたしの持参したCDをかければキリンジの「風を撃て」が流れて、一緒に歌う。
尾花沢に向かうまではずっと山で、八幡平を通った。
「ずっと昔の夏に、親戚で八幡平泊まったことがあるわ、八幡平リゾートホテルってとこだったような」
と言うと、友達は
「俺は近いけれども初めて通ったわ」
と言った。熊注意の看板を何度も通り過ぎながら、友達の住んでいる地域で、夫婦で山菜採りに山へ入ったら奥さんとはぐれ、奥さんを探していたら熊に喰われていたところを旦那さんが見つけたという事件があったことを聞いた。
そんなこんなで尾去沢鉱山についた。尾去沢鉱山は空いていて、鉱山の中はひんやりしていた。尾去沢鉱山に以前に来たことがある友達は、私に中は寒いぞとしきりに言っていたくせに、自分は半袖で寒い寒いと言っていた。
中はダンジョンのようで楽しかった。昔ロクヨンのバンジョーとカーズーイの対戦ゲームで、トンネルの中で出くわした敵に卵をぶつけるゲームがあったのだけれども、そのトンネルに少し似ていた。トンネルの後半は、鉱山で働く人や隠れキリシタンの人形があった。
尾去沢を出て、十和田湖へ向かう。坂で苦しそうなオッティを応援しながら山道を縫って向かう。
十和田湖はかなり大きかった。田沢湖も大きかったけれども、さらにさらに大きい。
十和田湖まわりを少し散策して、観光ボート乗り場へ向かった。
この観光ボート、ただのゆったり水辺を楽しむボートではないのである。
最高速度50knot(よくわからない)の超速アドベンチャーボートなのだ!!!
ものすごい風圧を受けた前髪が吹き飛ぶなかで、壮大な自然に驚く・・・・・・ けれども、本当に風圧が強すぎる!
十和田湖は水が冷たく、流れがあまりないらしく、沈んだ木などが腐らずに澄んだ水の底にそのままの姿を残しているらしい。自然保護のためもう人が立ち入れない島には、昔に人が立ち入った鉄の柵のあとが残っていた。
十和田湖にはキリスト教伝説があり、また近くにはキリストのお祭りも行われる戸来村がある。十和田湖一帯にいるときは夏なのになんとなく背中がスースーした、ような気がした。
十和田湖を出て、八戸に向かう。
今夜の宿は、1泊5000円の新むつ旅館。かつて遊郭だった旅館だ。
友達とは、写真の階段を、それぞれ私は階段を右に上った一番奥の部屋、友達は左に上った一番奥の部屋であった。実は構造上は隣同士なのだけれども、厚い壁で隔てられていて、互いの部屋に行くにはこの中央の渡り廊下を通らないといけない一番遠い部屋であった。
ちなみに、わたしの泊まった部屋は鍵がなくて、少し驚いたけれども、隣の部屋はファミリーで、なんかまあいっか、となった。おそらくどの部屋も鍵はないのでは?
夕飯は屋台村で食べる予定だったが、旅館の女将さんから、今日は三社大祭だと聞き、ご飯前に街に出かけた。今年はユネスコに登録されてお祭りが盛り上がっているらしい。
夕方だったので、かなり派手な山車たちは街をまわり終えたのか、市役所前にたくさん集まっていた。
夕飯は屋台村で海の幸などを味わう。イカめしが本当に美味しいかった! あまりの美味しさに一人で食べ過ぎて友達に驚かれる。八戸のバナナサイダーや日本酒を飲み、すっかりできあがった。
二件目に行きラーメンとせんべい汁を食べ、来られなかった友達に電話して、店を出てふらふらしながら、行きはバスに乗った道を宿まで歩いて帰る。
風呂がひとつなので、友達と入れ替わりにお風呂に入って、自分の部屋に戻って布団にゴロンと横になった。エアコンのない部屋だったが、その日の夜は特に暑くなく、問題なかった。天井を見上げながら、この旅館がかつて遊郭だったことを思い出す。恨めしい気持ちでこの天井を眺めた女の人、たくさんいたのかな。幽霊は怖くなかったけれども、なんとなく気が重くなって寝付けなくなる。帰ってきたのも遅かったけれども、眠れずにもっと夜中にお手洗いに行ったら、友達の部屋の電気が点いていた。あ、友達も眠れないんだな、と思って、なんだか安心してその後はちょっと眠れた。